
鯛茶漬けからインスパイア!
まぐろの町、鹿児島県いちき串木野が生んだ「まぐろラーメン」。

遠洋まぐろ漁船の船籍数が日本有数の、“まぐろの町”と名高い鹿児島県いちき串木野市。
そのジモメシ(=地元飯)として誕生した「まぐろラーメン」をご存知だろうか。今回は、まぐろラーメン発祥の[中国料理 味工房みその]にジモメシ調査隊が訪れて、開発秘話やこだわりを伺った。
まちおこしから生まれた唯一無二の一杯

今回訪れたのは、鹿児島県西部に位置し、まぐろの遠洋漁業が盛んな港町として知られるいちき串木野市。
この日はほとんど風もなく、山・川・海に囲まれた自然豊かな光景が広がります。

そんな町で長年愛されてきたのが、[中国料理 味工房みその]。市内を中心に展開する「味工房みそのグループ」の本店で、ラーメンや坦々麺をメインにコース形式の中国料理も提供しています。ほんのりシックな黒の外観が目印です。

店の入り口には、イキのいいまぐろの看板がスタンバイ。

(左)坂口信也さん、(右)勘場洋平さん
赤い暖簾をくぐると、3代目の勘場洋平さんと常務の坂口信也さんが笑顔でお出迎え。

小上がりの座敷席とカウンター席を用意。
赤を基調とした内装や奥に見える円卓が中国料理店らしい。

1970年に小料理屋として祖母が開業し、家族連れや親戚の集まりなどにも使いやすいようにと僕の父(2代目)の代で中国料理店になりました。

まぐろラーメンってどんな風に生まれたんですか?

まちおこしの一環として2001年に誕生しました。「まぐろを使った町の名物が作れないか」と地元の観光協会から料飲業組合に相談があり、組合の会長をしていた父が中心となって開発することになりました。
というのも、いちき串木野市は遠洋まぐろ漁船の保有数が日本有数のまぐろの町。九州新幹線や南九州自動車道の開業も相まって、町ににぎわいを取り戻そうという動きがあったんです。


そんな流れがあったのですね。
まぐろとラーメンって意外な組み合わせじゃないですか?

開発を始めた2000年代初頭がラーメンブーム真っ只中で、地元の食材を生かしたご当地ラーメンが流行っていたんです。

うちがご当地ラーメンとして火が付いたのは、とあるラーメン業界の著名人に「うまい」と言ってもらえたことがきっかけなんです。
それを機に、全国からラーメンマニアが訪れるようになりまして。一日中行列が絶えなくて、店前から国道まで続く1kmほどの道に車が大渋滞。その状態が3ヶ月続きました。

それはとんでもない反響ですね。

息をつく暇もないほどの忙しさでした。鹿児島は豚骨系の白湯スープがメジャーなので、清湯系の魚介スープに馴染みがないぶん地元の方に親しんでもらうのに苦労しましたね。
時間をかけながら少しずつ浸透していき、今では週に一度通う方や、一時間ほどかけてわざわざ食べに来る常連さんもいらっしゃって。スープがあっさりしているので年配のお客さまも多いんですよ。
開発時は魚特有の臭みを取るのに苦戦

開発時はどんな苦労があったのですか?


一番大変だったのはスープ作りですね。うちのスープはまぐろの頭を使うのですが、魚独特の生臭さを取り除くのに苦戦しました。いろいろ試行錯誤する中で、先にまぐろの頭を炭火で焼くという手法に辿り着き、一年以上かけてようやくスープを完成させることができました。

長い時間をかけて完成したメニューだったんですね。特徴やこだわりも教えてください。


炭火焼きにしたまぐろの頭に、香味野菜や昆布とカツオの一番だしを合わせた清湯系スープが特徴です。
グツグツ煮立たないよう丁寧に火入れすることで、臭みを抑えつつクリアな色味や味わいにしています。

透き通っていてとってもきれい。
まさに黄金スープですね。


トッピングの漬けまぐろには、県内でも特に甘いと言われる醤油を使っています。まぐろは地元の漁船から仕入れていまして、この町を盛り上げるため地元産の食材にもこだわっています。

ちなみにおすすめの食べ方はありますか?

まずはそのまま食べて、途中で別添えのワサビをスープに溶かして味変を。麺を食べ終わった後は、スープにご飯を入れてお茶漬け風に味わうのがおすすめです。
実は、まぐろラーメンは「鯛茶漬け」から着想を得たメニューでして。ご飯と薬味付きのセットもあるのでぜひ試してみてください!
スシローで味わう際は、
「〆にしゃりを入れて楽しむのもいいですね」とのこと
名物のまぐろラーメンを、いざ実食

串木野名物まぐろラーメン 中

とってもおいしそう!それでは早速いただきます……(スープをごくり)。
あっさりしているようで深いコクも感じられて、だしの旨みが体に染み渡ります。食事や飲み会の〆にも良さそうです。

漬けまぐろは結構しっかりめの味付けですね。これがあると全体にメリハリが生まれます。

そうなんですよ。朝ラーにもぴったりだってよく言われます。
スープがあっさりしているぶん、アクセントになるよう漬けまぐろは濃厚な味に仕上げています。最初はレア、スープで温まるとミディアム、ウェルダンと変化するので、3段階で楽しむことができるんですよ。

レア好きからすると、すごくありがたいサービスです。ではスープにワサビを溶いてみて……(再びスープをごくり)。
わぁびっくり!ワサビが入ることで味がグッと引き締まりました‼︎ 漬けまぐろのおいしさも際立ったように感じます。

気に入ってもらえて良かった。ワサビの量は好みで調節してくださいね。入れすぎないよう注意ですよ!

おいしくてあっという間に完食。
スープもしっかり飲み干しました。

大満足の一杯をありがとうございました!最後に、まぐろラーメンの今後の展望を教えてください。

今、いちき串木野市では少子高齢化や過疎化がどんどん進んでいます。
「地元の飲食店と力を合わせて町を盛り上げたい」という想いから、うちは開発当初からまぐろラーメンのレシピを公開していて、現在は市内6店舗でまぐろラーメンを味わうことができます。
同じメニューとはいえ店舗ごとに個性的なアレンジを加えているので、市内を回遊しながら食べ比べをするのも楽しいんじゃないのかな。そんな風に、まぐろラーメンが町に人を呼ぶコンテンツの一つになれば嬉しいですね。日本のみならず世界にも広めていきたいです!

すてきな笑顔で送り出してくれたおふたり。

鉢底に描かれた文言は、店のオリジナルBGMの歌詞から。
訪れた際は耳を傾けてみて。


中国料理 味工房みその
〒896‐0041 鹿児島県いちき串木野市北浜町4番地
11:00~15:00(OS 14:30)
店休日:毎週火曜日・水曜日
(祝日の場合は営業しております)
※諸事情等により、変更になる場合がございます。
予めご了承くださいませ。
※2025年5月時点での情報です



お店がオープンしたのはいつでしょうか?