海と田んぼPROJECT スシロー

Project No.4 宇和島のクエ(販売終了)

伝説の島から愛情を込めて。

< 愛媛県宇和島市 2014年12月 >

  • 生け簀から船へ、タモで1匹ずつ大切に。

  • 波静かな入り江に広がる日振島の養殖場。

  • 網を引くと、生け簀の底から見事なクエの姿が。

  • 船上で福島さんご夫婦を。魚への想いは人一倍。

  • 宇和島ではクエの薄造りも逸品として。

宇和海の彼方から、すしネタとして

身に脂がのる冬が旬の、“超”が付くほどの高級魚といえば、クエ。九州では「アラ」と呼ばれ、大相撲九州場所の時期になると力士が好んで食することでも知られています。主に九州など西日本の温かな深い海に生息するため、関東では市場に出回ることは稀で、高級料亭でもなかなか仕入れることができないと言われています。岩場の深みに潜み捕獲が難しい、まさに幻の高級魚です。

そのうまみがぎっしり詰まった鍋料理で知られるクエを、さらに贅沢にすしネタとしてお届けするために、スシローは、愛媛県の宇和島でクエの養殖を行っている生産者の方々とともにプロジェクトに取り組みました。

宇和島市街から高速船でリアス式海岸の深い入り江からなる宇和海へ。クエの養殖が行われている日振島(ひぶりしま)は、宇和島港から約28キロ西方の、九州と四国に挟まれた日本屈指の漁場、豊後水道にあります。実は、この島は平安時代中期、東の平将門とともに王朝国家を震撼させたことで名高い海賊の頭、藤原純友(ふじわらのすみとも)が拠点としたとされる伝説の地。しかし、「その海賊が来る前から、うちはこの島で代々漁師をやっていたんですよ」と笑いながら話してくれたのは、生産者の福島和彦さん。クエの養殖は、海と魚を知り尽くした千年漁師の手で行われていたのでした。

研究を重ねて磨いた養殖の技

外海の荒波を避けるように形成された見事な自然の入り江に、養殖のための生け簀(す)がたくさん設置されています。「日振島の海は、太平洋と瀬戸内を行き来する通路になっているので、潮変わりがよくて海が深い。それに人がたくさん暮らす場所からも遠く離れています。養殖には最適なんです」と、福島さんが教えてくれます。「遠いから魚を届けるのに命がけの時だってあります。でも、この島で育てる意味があるんですよ」。

クエのために11メートル四方の大きな生け簀が3つ。5人がかりで少しずつ仕掛けた網を引いていくと、大きく立派に育ったクエの姿とともに、なぜかマダイやイシガキダイなど、ほかの魚が見え隠れします。これは福島さんならではの独特な養殖方法。他種の魚を一緒に入れることで金網に付着したムラサキガイや天草などを食べてもらい、生け簀の中の潮通しをよくしてきれいな状態に保ち、クエにストレスを与えない環境をつくることができるそうです。

「最初の頃は、1種類ずついろんな魚を混ぜて試しました。毎日のように潜って様子を見て、どういう位置でどんな雰囲気かを確かめながら」。

福島さんが、クエの養殖を始めてから12年ほどになります。当初、クエに適した生け簀に改造するのに約5年もの月日がかかったそうです。「クエは、ふだんは岩の奥にじっと潜んでいる魚。生け簀の中に落ち着いて生活できる場所を設けるのが、いちばんたいへんでした」。そのために網の素材そのものにもこだわり、また、クエのための餌も愛媛県の水産研究センターと一緒になって研究し独自に開発したものを使っています。「ほかの人が難しいと言う魚を飼うのが、私のやり甲斐なんですよ」と語る、福島さんの養殖にかける情熱は相当なものです。

私たちにとって、クエは子ども以上

「人間が手を加えるよりも、そこの海の力で育った魚のほうが素晴らしいし味が出る。養殖は、人間が魚をコントロールするのではなくて、魚に人間が合わせることが大切です」と話す福島さんが、生け簀から1匹ずつ丁寧にタモに入れ、妻の志保さんがすばやく受け取り、傷つけないように仕切りの入ったカゴに移していきます。「私たちにとってクエは、子ども以上です(笑)。ほかの従業員もいるけど、大切な部分だけは絶対に私たち夫婦が行います。私も嫁も心を込めて」。

愛情たっぷりのクエが収められたカゴは、そのまま船内の生け簀へ。向かった宇和島港で活魚車に積み込まれます。福島さんの漁場と船は、衛生基準の厳しいEU輸出許可(EUハサップ※)を取得。船もクリーンエンジンを使うなど、さまざまな基準をすべてクリアしています。安全で安心、かつ最高基準の魚を届けたいという強い想いが伝わってきます。「相手が求める以上に美味しいものを届けたいという、私たちの意地かもしれませんね」。

スシローでは2014年12月、関東地区100店舗でこの「愛媛産宇和島のクエ」を限定販売しました。その美しい白身は、きめ細かな肉質で瑞々しく、ぽってりとした歯触りで、脂ののったなんとも言えない幸せな旨みでお客様の心をつかみたいへん好評でした。多くのお客様に喜びと感動を贈りたい——その一心で、これからも安心・安全なこだわりの食材を求めて走り続けます。

  • ハサップ(HACCP:Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品の安全性と品質を確保するため、原材料・加工・輸送・保管など各工程で監視と記録を徹底する管理方式です。EU向けに水産食品を輸出するには、EUハサップの規制に従って基準をクリアし認定を受ける必要があります。