千葉県勝浦市のご当地グルメ、勝浦タンタンメン。その元祖にして絶大な人気を誇る[江ざわ]を訪れた。
JR東京駅から特急わかしおで約90分、海と山の豊かな自然に囲まれた千葉県勝浦市へ。
勝浦の沖合は黒潮と親潮が交わる好漁場で、なかでもカツオは全国屈指の水揚げ量を誇る。また、勝浦で1591年から続く「勝浦朝市」は、日本三大朝市の一つ。新鮮な海の幸や朝採れの野菜、手作りの惣菜などが並ぶ。
JR勝浦駅前でレンタカーを借り、10分程度山道を走ると、白と黒の外観が目を引く[江ざわ]に到着。開店前の朝9:00頃から店頭のタッチパネル式発券機で整理券を配布しており、続々と整理券を取りに訪れる人の姿が見られる。さすがは勝浦タンタンメンの元祖で人気である。
今回は、「勝浦タンタンメン企業組合」の滝口裕都さん(右)と、先代から受け継いだ味を守り続ける[江ざわ]の3代目・江澤正紀さん(左)に、その誕生のきっかけや歴史、こだわりなどを伺うことに。
※「勝浦タンタンメン企業組合」は、勝浦タンタンメンを通して地域を盛り上げるべく、15年ほど前に発足した企業組合。
海女さん・漁師さんの、海仕事で冷えた体を温めるメニューとして誕生。
ラー油、ひき肉、玉ねぎを使った、醤油ベースのラーメンです。現在は、市内に30軒ほど勝浦タンタンメンの店があり、この基本形を軸に、味噌や塩、豚骨などを掛け合わせてアレンジし、それぞれ個性のある一杯を提供。さまざまな形に派生しているのも面白いところですね。
バラエティに富んでいますね。
赤くてラー油がたっぷりなので、一見「辛そう」と思いがちですが、辛さだけではない、しっかりとした旨みを感じられる。それが、勝浦タンタンメンの特徴だと思います。
食べるのが楽しみになってきました。[江ざわ]さんの開業と、勝浦タンタンメンが誕生したきっかけも知りたいです。
1954年に初代にあたる祖父が大衆食堂として創業しました。祖父は食べることが大好きで、国内外を問わずいろんなものを食べ歩くなかで、担々麺に出会い、それを参考にしたメニューを作ろうと決めたそうです。とはいえ、当時の日本ではゴマをベースにした芝麻醤(チーマージャン)がなかなか手に入らず、試行錯誤の末に、自家製ラー油を使った独自の一杯が生まれました。
当時は勝浦漁港の近くに店を構えており、漁から戻った漁師さんや海女さんが、冷えた体を温めるために、ラー油がたっぷり入ったうちの担々麺を食べていたそう。それが口コミで広がって評判を集め、やがて「勝浦タンタンメンの元祖」と呼ばれるようになりました。
そんな経緯があったのですね。スープや麺、ラー油のこだわりを教えてください。
動物系と魚介系のWスープに、千葉県産の濃口醤油などをブレンドしたかえし醤油を合わせています。麺は、なめらかな喉ごしとコシの強さを併せ持つ、中細ストレートの卵麺。伸びにくいのが特徴です。味の決め手は、なんといっても秘伝の自家製ラー油。
すっきりとした辛さながら、ジワジワと後をひく旨みを感じられます。玉ねぎやニンニク、ネギなどは、できるだけ国産にこだわっています。辛さは5段階から選べます。
勝浦タンタンメンの元祖の味を実食!
料理を提供してくれたのは、近所の大学に通うアルバイトの鎌ヶ迫健吾さん。
真っ赤なスープと盛り盛りの白髪ネギとのコントラストが映える、とてもインパクトのあるビジュアルですね。
一気にすすると必ずむせるので気をつけてくださいね。2人に1人はむせている人を見かけます(笑)。
アドバイスありがとうございます。それでは慎重にいただきます(スープをごくり)。しっかりとした辛さの奥に豊かな旨みを感じられて、ずっと飲み続けたくなりますね。(麺をずるずる……)ツルッとしていてしなやかな弾力があり、ほどよくスープに絡みます。とろとろに煮込んだ玉ねぎの甘さとゴロっと入った挽肉が、味や食感のアクセントになっています。
まずはそのまま食べてください。卓上の酢を加えると、少しマイルドになりますよ。麺を食べ終えた後、残ったスープにご飯を入れる方も多いですね。
酢を入れると辛さが和らぎます!また違った奥行きが生まれますね。
あっという間に完食。「まいど」の文字に感謝の気持ちが込められている。
勝浦タンタンメンを、
旅の目的にしてほしい。
「勝浦タンタンメン企業組合」は、どのような活動を行っているんですか?
[江ざわ]さんをはじめとした加盟店と協力しながら、組合監修商品の開発や商標管理などを行い、勝浦タンタンメンの魅力を発信しています。そうした活動が評価され、文化庁が定める「100年フード」に令和7年度認定されました。今後は、さらに100年先も愛され続けるソウルフードになればと願っています。
僕もこの文化を守っていきたいです。万が一、うちが営業できなくなってしまっても、他のお店がきちんと勝浦タンタンメンの文化を引き継いでいってほしい。僕ら加盟店も、組合が発足して以降、今までなかった横のつながりができました。互いの店を行き来したり情報交換をしたり、もちろん同業のライバルではありますが、勝浦を一緒に盛り上げていこうという想いで頑張っているんです。みんなで力を合わせて、勝浦タンタンメンを後世に残していきたいですね。
次世代にバトンを引き継ぐためにしていることはありますか?
4代目は娘に決まっていて、今はとにかく数字化を進めて、味を再現しやすいようにしています。勝浦タンタンメンの元祖として、その暖簾を受け継ぐことって、思っている以上にプレッシャーなんです。僕も感じてきたことなので、娘にもそれを乗り越えて、[江ざわ]の味を守り続けてほしいですね。
今後は、どんな風に勝浦タンタンメンを普及していこうと考えていますか?
勝浦タンタンメンが観光の目玉になればと思いますね。勝浦タンタンメンを食べに来て、そのついでに勝浦周辺の観光スポットに立ち寄ってほしい。少しずつそういう方も増えてきているので、そんな楽しみ方をもっと発信していきたいです。
写真は「日本の渚百選」にも選ばれた県内屈指の絶景スポット・鵜原海岸に佇む白い鳥居。
食で町おこしをするのって難しいんですけど、お店の皆さんが協力してくださるので、僕らならできるんじゃないのかなと思います。
うちはとにかく暖簾を守ることで、勝浦に来る理由を作りたい。担々麺を食べて、いろんな場所で遊んで魅力を知ってもらって、「また勝浦に来たい」と思ってもらう。うちも観光パンフレットをたくさん置いていて、勝浦を丸ごと楽しんでほしいという想いがあります。やっぱり勝浦が好きなので。そこが一番です。
まさに勝浦愛ですね。
元祖勝浦式担々麺 江ざわ
千葉県勝浦市白井久保296-8
090-4410-5798
11:30〜18:00
月曜休
※諸事情により、変更になる場合がございます。
予めご了承くださいませ。
※2026年9月時点での情報です。
※写真はイメージです。



“担々麺”と聞くと、一般的にはゴマベースのスープを思い浮かべますが、勝浦タンタンメンは全くの別物ですよね。まずは、勝浦タンタンメンの定義について教えてください。