「一度断った僕のことを、ずっと見てくださっていた。」
別の道を選んだアルバイトが、同じ会社の店長になるまで
佐々木 慎吾第三営業部 課長 川江 翔太第二営業部 山科店 店長
高校3年生の夏に始めたアルバイト。その店に、佐々木さんが店長として異動してきたのは、川江さんが大学に入った年の秋でした。まだ人のそろいきっていなかった広島のお店で、店長とアルバイトとして出会った二人です。
川江さんは大学を卒業するまでその店で働き、社員にはならず、別の業界へ進みました。そこから数年後、キャリア採用でスシローに入社。今は京都のお店の店長として、リニューアルしたばかりのお店を見ています。佐々木さんは大阪本社での勤務を経て、この秋から富山県の店舗を見る課長へ。同じ会社にいながら、仕事で顔を合わせることはほとんどありません。
それでも佐々木さんは、初めて会った日に川江さんが言った一言を、今も覚えていました。当の川江さんには、その記憶がありません。
一度は別々の道を歩いた二人のあいだで、何が受け渡されていたのか。二人に話してもらいました。
師匠
佐々木 慎吾
第三営業部 課長
2009年2月 あきんどスシロー入社
別の業界で働いたのち、スシローへ。広島の店舗で店長を務め、エリアマネージャー、課長へとキャリアを重ねる。愛知県での勤務、大阪本社での勤務を経て、2026年9月から富山県の担当店舗を受け持つ。
※所属・役職は公開時点
弟子
川江 翔太
第二営業部 山科店 店長
2021年4月 あきんどスシロー入社
高校3年生の夏から、広島の店舗でアルバイトとして働く。大学卒業後は美容関連の会社に就職し、その後キャリア採用でスシローへ。広島の店舗を経て、現在は京都府の山科店で店長を務め、リニューアルしたお店のスタッフさんと日々の営業をつくっている。
※所属・役職は公開時点
不安なまま入った初日、
最初に声をかけてくれた人がいた
——二人が出会ったのは、
どんなお店だったのか?
佐々木さんが広島のお店に来られたころのこと、僕のほうはあまり覚えていないんです。そのとき、実際どう思っていたんですか。人が足りないお店だったのは、わかっていましたけど。
川江 翔太
佐々木 慎吾
異動を言われたときは、不安のほうが大きかったです。その前にいたのは、オープンしたばかりで人もそろっているお店で、これでやっていけるぞと思っていたところでした。そこから、まだ人の集まりきっていないお店へ、と言われて。ただ、そんな気持ちで初めて店に入った日に、一番最初に声をかけてくれたのが川江さんだったんです。
僕でしたか。嬉しいんですけど、恥ずかしながら覚えていなくて……。
川江 翔太
佐々木 慎吾
テンションが高くて、昨日も会っていましたよね、くらいの勢いで「なんとかなりますよ」って。話も聞いてくれて、その日に「あ、やっていけるかな」と思えたんです。そこから、お店をこうしたい、ああしたいという話も受け入れてくれて、一緒にやってくれました。
そこまで覚えていてくださったんですね。僕のほうは、申し訳ないくらい薄くて、第一印象は見た目だけでした。背が高くて、すらっとした方だな、くらいで。社員さんが変わるときは、どんな方が来るのかとみんなで話すものですけど、僕はそれもしていなくて。ただ、話しかけたら気持ちよく返してくださる方だな、というのは初日にわかりました。
川江 翔太
佐々木 慎吾
川江さんは、当時のお店をどう見ていたんですか。
僕はスシローが初めてのアルバイトで、人数が少ない状態が当たり前だったんです。だから大変だとは思っていなくて、むしろ楽しさのほうが強かった。当時の僕には数字のことは見えていなかったので、提供の速さがお店の数字にどうつながるかも、考えたことがありませんでした。ひたすら、来たオーダーをどれだけ早くつくれるかをアルバイト同士で競っていて、そこに楽しさを見つけていました。
川江 翔太
まず人を集めた。
次に、みんなが同じ方向を
見るようになった
——お店を立て直すとき、
二人は何を見ていたのか?
佐々木 慎吾
川江さんは覚えていないと言いますけど、私は当時、みんなに助けられていたんです。人が足りないなかでも、誰も文句を言わずに、テンション高くやってくれていました。しんどいとも言わずに。
これは聞いたことがなかったのですが、社員として、何から立て直そうと思ったんですか。
川江 翔太
佐々木 慎吾
とりあえず、人を集めることからでした。それがないと何も始まらなかったので。そのうえで、基本はずっと変わっていなくて、リピーターを増やすことです。おすしがきれいでないと、次も行きたいとは思ってもらえません。接客も同じで、その一回一回が丁寧であってこそ、また行きたいお店になるんです。それは今も心がけています。
人が増えていったのは覚えています。店長が変わってから、ヘルプの方が来てくださったり、社員さんが増えたり。もともと打ち解けたお店でしたけど、佐々木さんが来られてから、チームワークに磨きがかかったと思います。
川江 翔太
佐々木 慎吾
川江さんは、私がこうしたいという話をすると、納得したうえで、みんなに「こうしよう」と率先して言ってくれました。笑いながら働ける空気ができると、「こうしたいよね」と言ったときに、みんなが同じ方向を見てくれるんです。
僕はただ楽しくやっていただけですけど(笑)。
川江 翔太
佐々木 慎吾
それが大きかったんです。それまでできなかったことですけど、店長と副店長が同じ日に休みを取れるお店になりました。川江さんたちがいなかったら、そうはなっていなかったと思います。
そう言ってもらえるのは嬉しいです。ただ、僕がしんどいと感じたことがなかったのは、佐々木さんが締めるときは締める方だったからだと思います。さっきまで笑っていたのに、次の瞬間には切り替わる方でしたから。僕は基本ふざけていたので、空気が変わったと察したら少し距離を取って、大丈夫そうならまた戻る、という間の取り方を覚えました。
川江 翔太
一度は別の道へ。それでも、
ずっと見てくれていた
——川江さんは一度、別の道を選んでいる。
そのとき二人は何を考えていたのか?
佐々木 慎吾
これは聞きたかったのですが、大学を出るとき、社員になる話も進んでいましたよね。そのうえで別の道を選んだのは、どういう気持ちだったんですか。
一つは、当時趣味で神楽をやっていて、公演が土日だったんです。平日に2回練習して、土日に舞台。社員になると、土日の舞台に立ちつづけるのは難しいだろうと、当時は思っていました。もう一つは、アルバイトとしては楽しかったけれど、当時の僕は、社員になったら大変だろうと思い込んでいたことです。飲食への漠然としたイメージもあって、まったく違う美容の仕事に就きました。
川江 翔太
佐々木 慎吾
当時は、正直ショックでした。初日に声をかけてきてくれたときの様子を見て、社員になっても必ずやっていけると思っていたので。選んだ道のほうがいいと思いながら、もったいないなという気持ちも、正直ありました。
そう思ってくださっていたんですね。美容の仕事も楽しかったです。ただ、続けていくなかで、スシローで見ていた景色を思い出すようになりました。頑張ったぶんだけ見ていただけて、実際に僕と年齢の近い人たちが店長として活躍していました。それを知っているから、やってみたいと思って転職を決めました。
川江 翔太
佐々木 慎吾
相談を受けてからは、早かったですね。
採用課の方から、勤務地は愛知か広島かと聞かれたのを覚えています。半年後には佐々木さんが愛知県に異動することが決まっていたからでした。僕は広島を選びましたが、佐々木さんはその後1年ほどで本社へ行かれて。一緒に働いた時間は、結局それほど長くはなかったんです。
川江 翔太
佐々木 慎吾
せっかく広島に戻ってきてくれたのに、申し訳ないなと思いました。
でも、そのとき声をかけていただかなければ、自分から動けていなかったと思います。一度断った僕のことを、それでもずっと見てくださっていたんです。店長になった今、自分もスタッフさんに対してそうありたいと思っています。
川江 翔太
離れた場所で、同じやり方の
お店をつくっている
——離れた場所にいる二人は、
今どんな関係なのか?
今は仕事で関わることは、ほとんどありませんよね。全店宛のメールで名前を見るくらいで、営業部の会議で会うこともなくなりました。ただ、社内の野球チームの試合で顔を合わせますし、聞きたいことがあれば連絡します。
川江 翔太
佐々木 慎吾
役職で見る関係というより、仲間に近いかもしれません。川江さんが店長として何をやっているかも、聞いていますし。最近、お店をリニューアルしたと聞きました。
そうなんです。リニューアルのテーマを決めるところから、スタッフさんと一緒に楽しんでやろうと思いました。笑いながら働ける空気をつくるところは、佐々木さんのお店から受け継いでいると思います。それと、おすしをつくる技術も大事ですが、お店を運営するうえで一番大事なのはコミュニケーションだと思っています。それも、佐々木さんのお店で教わったことです。
川江 翔太
佐々木 慎吾
タイプが似ているところもあると思うんです。だから、いつかは次の世代に向けて、自分の想いを渡していってくれる人であってほしいと思っています。
ありがとうございます。僕からは、新しい場所でも長く元気でいてほしい、ということです。
川江 翔太
佐々木 慎吾
肝に銘じます。私にとっては、店長のころに見えたものが一番大きかったです。お店の空気は、店長の姿から変わっていくんです。しんどそうに店長がやっていたら、みんなもしんどくなります。店長が楽しく働いていれば、雰囲気も変わっていく。それは店長次第でできることなんです。
僕は、社員になるのは大変だと思っていた側の人間です。でも今は、会社という大きなものに守られながら、一つのお店を事業主のように任せていただける感覚に近いと思っています。売上の管理も、採用も、発注も、自分の判断でやってみられます。社員として、それを一つのお店で丸ごと経験できるのは大きいと思っています。休みも、社員になってから週2日休めなかった週はありませんし、半期に一度は5連休も取れています。
川江 翔太
佐々木 慎吾
楽しいですよ。自分のペースでできますし、やったぶんは返ってきます。お客さまに喜んでいただくために何が必要かを追いかけていくと、やりがいは見えてくるんです。
同じ仕事をしているようで、奥が深いんです。お客さまのコメントで、おすしの完成度がどう見られているかがわかって、先週より今週の数字がどう変わったかも見えます。だから飽きません。やってみたいことは、まだいくらでもあります。
川江 翔太








